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「ぱっとふる~ん」を使ったトレーニングがゴルフスイングに及ぼす影響

川上 貢(福岡大学スポーツ科学部)

1.概要

「ゴルフスイング」および「バッティング」は、短い時間にバット(ゴルフの場合はクラブヘッド)を最大に加速しボールを捉える点ではヒトの「道具を使った究極の加速運動」ということができる。バット、ゴルフスイングは下肢→腰→肩→肘→手首→指先→バットの順に下肢から胴体、さらに上肢に向かって効率よく加速する運動であり、よい回旋、円運動の形成が必要であると思われる。そのよいゴルフスイングのフォームおよび動作を形成するための道具は多いが、実際その効果が検証されたものは少ない。今任は、野球経験によるバッティング理論を基本に、よいゴルフスイングを身に付けるためのゴルフスイング練習器具「ぱっとふる~ん」を考案した。また、同時にそれを使ったトレーニング方法も考案した。よって今回は「ぱっとふる~ん」を使い、このトレーニング方法でのトレーニング効果をみることを目的とした。

2.実験方法

実験方法 被験者はF大学スポーツ科学部に所属する男子学生(Hight:168cm Weight:70kg ハンディーキャップ110)1名とした。 試技は、トレーニング前、中、後の下記日時において、F大学体育館でネットを張り、ネットに向かってドライバーショットをしてもらった。その内の成功試技20試技をデータ収集した。 スイング動作は被験者正面から高速デジタルカメラ(Ditect Sports Corder)で200 f/sで撮影した。また、インパクト時のクラブヘッドとボールの衝突のようすをみるためインパクト位置真上から高速デジタルカメラ(Ditect Sports Corder)で500 f/sで撮影した。なお、2台のカメラは同期撮影した。 インパクト時のヘッドスピード、ボールスピード、ミート率、推定飛距離は、スイング計測器(GST-3)で測定した。測定日(実験日)は下記に示したようにトレーニング前、中(約1.5ヶ月後)、後(約3ヶ月後)の3時期とした。
実験日程
1回目 2011年6月29日(水曜)
2回目 2011年9月13日(火曜) (トレーニング開始後 約1ヶ月半)
3回目 2011年10月25日(火曜) (トレーニング開始後 約3ヶ月後)

3.トレーニング方法

トレーニング方法

「ぱっとふる~ん」は左図に示したような、長さ1mのナイロン製(約360g)シャフトの先端に重り(約295g)のみ付いたもの、穴あり3枚羽根(約105g)の付いたものを使用した。

被検者には下記のような基本練習Ⅰ~Ⅳと総合練習を毎日1から2回、約3ヵ月間(2011年6月30日~10月24日)実施してもらった。

(基本練習Ⅰ:羽根ありシャフト)拇趾丘体重(姿勢) 10回

軸足は拇趾丘立ちを、両足は1足長 (シューズの長さ)離し立つ。
軸回転を意識し、軸を固定し、動かさないように意識し回転運動でスイングする。

(基本練習Ⅱ:羽根ありシャフト) 低重心 10回

軸足は拇趾丘立ちを、両足は肩幅程度離し立つ。軸を崩さず回転し、体重移動を意識しスイングする。

(基本練習Ⅲ:羽根ありシャフト) トップの姿勢 10回

通常のスタンスで立ち、トップで1秒ストップさせる間を置く、片手(右利きは右手)でスイング。

(基本練習Ⅳ:羽根なしシャフト)で10回

下の円(腰回転)から上の円(肩回転)の回転運動の時間差、間を意識する。
シャフトが軽い分、決して上体だけにならないように間と体のしなりを意識しスイングする。

(総合練習:羽根ありシャフト)基本練習(Ⅰ~Ⅳ)を意識し10回

下図のようにTライン(90度 45度)でスタンスをとり、膝の後ろと拇趾丘に意識を置き、下の円(腰回転)から上の円(肩回転)の回転運動の時間差、間を意識しスイングする。

トレーニング方法1
基本練習Ⅰ 基本練習Ⅱ 基本練習Ⅲ 総合練習

4.結果および考察

「ぱっとふる~ん」を使ったトレーニングを始める前をTR前、トレーニングを始めてから約1ヶ月半後をTR中、トレーニングを始めてから約3ヶ月後をTR後とする。

1)インパクト時の各測定値

表 インパクト時の各測定値(n=20)

headspeed(m/s) ballspeed(m/s) distance(yd) meet率 フェース角度 インパクト位置

TR前 40.0 44.8 144 1.12 11.0 2.22
TR中 38.9 47.7 158 1.23 6.4 1.31
TR後 38.1 50.2 171 1.32 3.4 1.56
headspeed(m/s) ballspeed(m/s) distance(yd) meet率 フェース角度 インパクト位置



TR前 2.19 10.71 47.4 0.273 4.53 0.857
TR中 4.22 3.83 17.0 0.161 3.35 0.614
TR後 3.22 3.61 15.0 0.130 2.81 0.811

2)ヘッドおよびボール速度について

トレーニング方法17

スイング計測器(GST-3)で計測されたTR前、中、後のインパクト時のヘッド速度、ボール速度平均、標準偏差を図に示した。 ヘッド速度はTR前40.0m/s、TR中38.9 m/s、TR後38.1m/sと大きな差はないものの、トレーニング経過とともに小さくなっていた。また、標準偏差はTR中で大きく、TR前、TR後では小さかった。 一方、打ち出されたボール速度はTR前44.8m/s、TR中47.7m/s、TR後50.2m/sとトレーニング経過とともに大きくなっていた。標準偏差はTR前でかなり大きくTR中、TR後で小さかった。ボール初速から算出される推定飛距離は初速から算出されるため同じようにトレーニング経過とともに大きくなっていた。 すなわち、トレーニングによってヘッドスピードは伸びないが、ボールスピードは上がったことになる。また、トレーニングの開始前のボールスピードのばらつきが大きく、この時期のミートの不安定さが伺える。

3)ミート率について

トレーニング方法18

ミート率とは、「ボール初速÷ヘッドスピード」で算出される。よって、どのくらい効率的にクラブヘッドでボールを捉えたかの目安となる。プロ選手のミート率は一般的に 1.4~1.5といわれている。
トレーニング経過と共にミート率はTR前 1.12、TR中1.23、TR後 1.32と比例的に大きくなっていた。
また、標準偏差はTR前 0.273、TR中 0.161、TR後0.13ととトレーニング経過と共に小さくなっていた。
すなわち、このトレーニングにより効果的にボールを捉えることができるようになり、なおその安定性も高くなってきたことがわかる。
そこでインパクト時の状態をフェイス角度、インパクト位置かからみていく。

4)フェイス角度について

トレーニング方法3

インパクト時(ボール接触瞬間)のフェイス角度を図のように定義しその角度の平均値を示した。(上図) フェイス角度はTR前11.0度、TR中6.4度、TR後3.4度とトレーニング経過と共に小さくなっていた。 また、標準偏差もTR前4.53、TR中3.35、TR後2.81とトレーニング経過と共に小さくなっていた。 すなわち、トレーニング前はクラブフェイスの向きがオープンぎみで、その角度のばらつきも大きかったがトレーニング経過とともにスクエアーに近くなり、角度のばらつきも小さくなった。

トレーニング方法3
クラブとボールの接触を真上からみて、どの位置で接触したかに0~5まで図のような重みを付けインパクト位置とした。この図からわかるように、数値2.5が中央で、それより大きくなればクラブのヒール、小さくなればトゥ側に近いことを意味する。インパクト平均位置をみると、すべてにおいてトゥ側寄りで、TR前2.22、TR中1.31、TR後1.56とトレーニング前の平均位置が一番中央に近く、トレーニング中期ではトゥの方になり、トレーニング後では、中期より中央よりにインパクト時の平均位置が戻っていた。左図において、インパクト位置が黄色円のところが、一番よく飛ぶといわれている。被験者は赤部分付近(真上からみたので定かではない)で捉えるようになったと思われる。この位置はフック、ドローがでる位置で、飛球の空気抵抗を考えれば一番よい位置と思われる。

5)スイング動作分析

トレーニング方法7

スイング動作の主要局面スティックピクチャー

主要局面(スイング開始からインパクトまで)とフォロースルー局面(インパクトから両手が左肩上まで)のスティックピクチャーをみると、スイング開始のクラブヘッド位置がTR後はTR前に比べより深く(高く、左側)なっていた。インパクト瞬間のスティックピクチャーから、TR後はTR前に比べ右肩が左肩よりかなり低い位置にとなり、両上肢で作る三角形が崩れないまま左体側とクラブシャフトが一直線であることが観察される。 これらのことから、トレーニング前では上体はあまり動かさず上肢の回転でスイングしているのに対し、トレーニング後は上体(胴体)の回転(回旋)でスイングしていることが推測される。

トレーニング方法13

TR前、後のクラブヘッドの奇跡でインパクト位置座標を一致(座標変換)させ描いてみると(左図)、TR後はTR前と比較して主要局面(スイング開始からインパクトまで)で垂直方向の軌跡か大きく、フォロースルー局面(インパクトから両手が左肩上まで)では水平、垂直方向共に軌跡が大きく、横長の大きな楕円を描いていた。 すなわち、トレーニング後はフォロースルーの大きなスイングに変化していた。

トレーニング方法9

スイング開始時の重心の位置座標を一致させ(座標変換)、TR前、後のスイング開始からインパクトを経て両手が左肩上の来るまでの身体重心の軌跡図をみると、TR前がスイング開始の重心位置から左脚方向へ3.8cm、下方向へ1cm移動した位置でインパクトを迎えていた。一方、TR後は左脚方向へ4.7cm、上方向へ4.1cm移動した位置でインパクトを迎えていた。また、インパクト後のフォロースルー時にTR前は右脚方向に戻るのに対し、TR前インパクト時の重心位置から上方向のみへの移動であった。 すなわち、トレーニング前は重心移動が左右、上下方向共に小さく、インパクト後は右脚方向に体重を戻すのに対し、トレーニング後は右脚から左脚方向へ体重を移し、インパクト後のフォロースルーで左脚に乗ったままスイングが終わる動作になった。つまり並進運動の大きいスイング動作に変化した。

トレーニング方法14

クラブヘッドの速度は前述した重心の並進運動に加え、上半身各部位の速度荷重によって生み出される(キネマティックチェーン)。TR前、TR後の右腰、左肩、左肘、右手首のスイング開始からインパクトまでの主要局面の速度グラフを示す。 これをみると、TR前、後共に各部位速度ピーク値が時間ずれを起こしながら出現している。すなわち速度が中心部から末端部に加重される運動連鎖がみられた。 左手首の最大速度はTR前の方が大きいが、速度変化においてTR後は直線的に加速されているのに対し、TR前は山が2つ出現しスムーズな加速とはいえない。よって左手首の速度成分をみると、TR前はX方向速度においてスイング開始から加速であり2回の加速がみられる。またy負方向の最大値がX成分の一回目の加速と同期している。すなわち、TR前はスイング開始からボールに対し、左下への直線的なダウンスイング気味でありスムーズな円による加速とは考えられない。

トレーニング方法15 トレーニング方法16

左手首はクラブヘッドに一番近く、この速度変化がクラブヘッドの速度に最も影響を与えることが考えられる。よって、トレーニング後のスイング動作がよい加速運動と思われる。 その他の左上肢角部位の速度変化はTR前の方がTR後に比べなめらかな速度変化であるが、これは被験者正面からみた2次元データであるため、実際の3次元空間での動作である回旋等が表出されていないことが考えられる。 TR前、TR後の速度加重、速度貢献度のグラフをみると、前腕の速度加重はTR前、後同程度であった。上腕はTR前の方が大きく、斜軸ではTR後の方が大きかった。 貢献度もTR前、後での前腕の割合に変わりがなく約50%、斜軸と上腕の合計貢献度もTR前、後で50%程度であったが、TR後はTR前に比べ、斜軸の貢献が増し、上腕の貢献が小さくなった。 すなわち、トレーニング前は上腕の回転でスイング速度を生み出そうとした動作に対し、トレーニング後は、上体(肩)を残しておいて腰の回旋を開始し、適度な時間差をおいて上体回旋をするボディーターンに変化していたことが考えられる。

6)まとめ

ゴルフスイング用として開発された「ぱっとふる~ん」を用いたトレーニングを約3ヵ月間(2011年7月~10月)、男子学生(Hight:168cm Weight:70kg ハンディーキャップ110)に実施してもらった。その結果以下のようなことがわかった。

①トレーニングによってヘッドスピードは伸びないが、ボール初速はトレーニング経過とともに大きくなった。そのため飛距離(推定飛距離)がアップした。

②トレーニング前はインパクト時のクラブフェイスの向きがオープンぎみで、トレーニング経過とともにスクエアーに近くなった。また、インパクト位置はヘッドの中央より少しトゥ側になり、これらのことがミート率を大きくしたと考えられる。

③スイングの主要局面において上腕貢献度が小さくなり、斜軸貢献度が大きくなった。すなわち、腕のスイングから上体回旋でスイングするボディーターン動作に変化したことが考えられる。これにより上肢末端(手首)のスムーズで安定した加速が可能となった。

④ボディーターン動作により、後脚から前脚への体重移動がスムーズになり、クラブヘッドはフォローの大きな軌跡となった。

以上のことから、「ぱっとふる~ん」を用いたトレーニングはスイングが安定し、ミート率を上げ、ボール飛距離をアップすることがわかった。
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